りんごの音符(26)

チェロ/矢部優典さんやべ・ゆうすけ

1998年、東京都出身。8歳よりチェロを始める。桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース修了。毛利伯郎氏に師事。第86回日本音楽コンクールチェロ部門第2位およびE・ナカミチ賞、第69回全日本学生音楽コンクール高校の部第1位および日本放送協会賞を受賞。現在、NHK交響楽団チェロ奏者。オーケストラ・プレーヤーとしてサイトウ・キネン・オーケストラ、宮崎国際音楽祭、サントリーホール ARKクラシックスなどへ出演。室内楽の分野においては「レグルス・クァルテット」のメンバーとして活動しており、同団にて第43回霧島国際音楽祭賞および堤剛音楽監督賞を受賞、第31回松尾音楽助成を受給。

矢部優典さん
矢部優典さん
矢部優典さん
コンサート「中木健二“ロマンティックが止まらない8”」で演奏する矢部さん(右から2人目)=2月、東京・銀座の王子ホール

インタビュー

県美で演奏 響き楽しみ

昨年青森でスタートした「青い海と森の音楽祭」は、初回とは思えないほどスムーズに進んだ印象です。アウトリーチ(出前演奏会)がこんなに多い音楽祭も他にはなく、いろいろなところに出向いて、普段聴けない人たちに音楽を届けるというスタンスもすごくいいなと感じました。

オーケストラメンバーはよく知っている方々だったので安心感がありつつ、プロフェッショナルな雰囲気も感じられました。コンサートマスターの父(矢部達哉さん)と同じ舞台に立つこととなりましたが、僕は特別な気持ちはなく、気心が知れた親子という点で楽に弾けました。一緒に弾く機会は多くはないですが、父は不思議な緊張感があって苦手なようです(笑)。

昨年の音楽祭でカルテットを披露しましたが、今年から同じメンバーで「アルメリア・クァルテット」として登場します。ラベルを演奏予定で、昨年のドビュッシーに続いてフランスの音楽家の作品です。「青い海と森」という音楽祭の雰囲気に合っていて、今年の会場は県立美術館。絵画の前での演奏が、どんな響きになるのかすごく楽しみです。

チェロを始めたのは8歳のころ。両親の勧めに「やる」と言ったそうです。ピアノは習っていましたが、弦楽器を弾くのは初めてでした。ただ、スポーツや友達と遊ぶほうが好きで真剣には練習していませんでしたね。でも進学した音楽高校はチェロが上手な同級生が多くて。ものすごい刺激を受けたことで急にチェロに目覚めました。学校は違いますが、音楽祭にも出演している佐藤晴真さん(チェロ)も同学年です。

本格的に音楽に向き合う時期は遅かったですが、のびのびした子ども時代を過ごせたのは良かったように思います。練習ばかりで遊べないということもなく、高校でもひたすら楽しく弾いていました。のちに結成した「レグルス・クァルテット」も、すごく勉強になるし熱心に取り組んでいます。

僕は好きなことを早く見つけられたので幸運だったけど、もし見つかっていないなら興味のあることに全部チャレンジするのも悪くないかもしれませんね。好きなことを楽しむのが一番心にいいのではないでしょうか。

現在はNHK交響楽団のメンバーとして活動しています。楽団は今年結成100年で、忙しい反面やりがいのあるコンサートがたくさんあって楽しみです。音楽はゴールや正解がなく、自分で感じることも日々変わってきます。音楽以外の部分でいろんな経験をして、非日常を意識しながら刺激を受けつつ、得られたもので音楽を深めていきたいと考えています。

(まとめ・秋村有香)

矢部優典さんの1日(演奏会の日) 矢部優典さんの1日(オフの日)

作曲家はこんな人/ドビュッシー

ドビュッシーは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した、フランスを代表する作曲家の一人です。ドビュッシー以前の西洋音楽は基本的に長調か短調の2種類に分類できますが、ドビュッシーは多くの種類の音階を使って、自由で色彩豊かな音楽を追求していきました。

それまでは西洋(ドイツ)中心だったものに、東洋の音楽や中世の旋法を取り入れたのが特徴です。また、ドビュッシーが切り拓いた「音の官能」は印象主義の幕開けとなりました。「音楽の革命家」と呼んでも過言ではないでしょう。

前述した東洋の音楽との出会いは、1889年のパリ万博でジャワのガムラン音楽を聴いたことだったようです。ドビュッシーは、西洋の伝統的な「機能和声(ドミナントからトニックへ向かう約束事)」が唯一の正解ではないことを悟り、大きな衝撃を受けました。東洋的な音階(全音音階や五音音階)は、音楽から「重力(中心となる調の引力)」が消え、音が空間を浮遊するような自由を手に入れたと分析する音楽学者もいます。また、不安定な響きのまま放置したり、和音を平行に移動させたりしたことは「現代のジャズやオシャレなポップスのコード進行のルーツになった」とも言われています。

次にドビュッシーの譜面に書かれた指示やペダルの使い方にも注目してみましょう。ピアノは、鍵盤を押すことでフェルトのハンマーが弦を打ち音を出す構造ですが、ドビュッシーには「ハンマーのないピアノのように弾け」というような指示を楽譜に記した作品もあります。

2つのアラベスク、ベルガマスク組曲、弦楽四重奏曲、牧神の午後への前奏曲、ペレアスとメリザンド(オペラ)、交響詩「海」、映像、子供の領分、前奏曲集、遊戯など、ドビュッシーの名曲はテレビやドラマなどで多く使われています。ドビュッシーならではの不思議な感覚に触れてみてはいかがでしょうか。

(県吹奏楽連盟監修)