チェロ/伊東裕さんいとう・ゆう
1992年、奈良県出身。ピアノ三重奏団「葵トリオ」メンバー、東京都交響楽団首席チェロ奏者。東京藝術大学、同大学院修了。ザルツブルク・モーツァルテウム大学、ミュンヘン音楽・演劇大学にて研さんを積む。第77回日本音楽コンクールチェロ部門第1位。葵トリオとして、第67回ARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏部門第1位。これまでに札響、名古屋フィル、関西フィルほか多数のオーケストラと共演。国内外の音楽祭に参加している。
インタビュー
一体感、常設ならでは
チェロは「人の声に最も近い楽器」と言われ、温かく包み込むような音色が魅力です。音域も広く、低音から高音まで豊かな表情を持っています。その魅力を生かしたチェロ・アンサンブルという分野も確立されており、多くの人に親しまれています。
母と姉がバイオリンを弾いていたので、幼いころから音楽が身近な環境で育ちました。私自身もバイオリンを始めたがっていたそうですが、母に勧められチェロを始めました。音楽の道を志していた姉は小学生のころから毎日熱心に練習していましたが、私は部活動など他のこともやりたいと思い細く長く続けていました。
転機となったのは高校1年生の時。日本音楽コンクールで1位をいただいたことが、プロの道を意識するきっかけになりました。高校2年生で進路を考える中でチェロを続けたいという思いが強くなり、音楽家を目指すことを決めました。
私がチェロを担当している「葵トリオ」は今年で結成10周年となります。バイオリンの小川響子は同じ奈良県出身。中学生のころに初めて演奏を聴き、超絶技巧曲を圧倒的な勢いで弾きこなす姿に衝撃を受けたことを今も覚えています。その後、東京芸術大学で同級生となり、学部3年生から大学院まで4年間一緒に弦楽四重奏を組みました。
その経験をさらに深めるために参加した第3期サントリーホール室内楽アカデミーで、個人参加していたピアノの秋元孝介と出会いました。秋元も兵庫県出身のため関西地方での演奏を志して結成しました。
結成後2年間は大学のレッスンのために取り組み、時折演奏会を行うような形でしたが、2018年にARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏部門で第1位をいただけたことが転機となり、演奏の機会が大きく広がりました。
二人は同僚であると同時に先生のような存在。表現が多彩な小川は時に憑依されたような情熱的な演奏を見せてくれます。秋元は分析力に優れており、常に音楽を客観的に捉え、演奏するたびに解釈を深めていく力があります。これからも互いに刺激を与え合い、高め合える関係でありたいです。
昨年の「青い海と森の音楽祭」出演時は、室内楽公演では他の出演者の演奏を間近で聴くことができ、オーケストラ公演では大きなエネルギーの中で演奏する喜びを感じました。お客さまが熱心に耳を傾けてくださったこともうれしかったです。
葵トリオは今年も室内楽公演に参加させていただく予定です。オーケストラ公演には、弦楽器の小川と私が参加します。室内楽公演では、チェコの民族的な魅力にあふれた名作、ドボルザークのピアノ三重奏曲「ドゥムキー」を演奏します。10年ともに活動して生まれた信頼関係や、常設アンサンブルならではの一体感を青森の皆さんに味わっていただけたらうれしいです。
私は母がバイオリンを弾いていたこともあり、幼少期からコンサートによく連れて行ってもらいました。子どものころに2時間の演奏を静かに聴くのは簡単なことではありませんでしたが、今思えばとても恵まれた環境だったと感じます。
音楽祭は、初めてクラシックに触れる方にも楽しんでいただけるようなプログラムが組まれています。一流の音楽家が本気で奏でる生の音を子どものころに体験できる機会は決して多くはありません。まだあまりクラシックに興味がなかったとしてもきっと楽しめるはず。ぜひ多くの子どもたちに音楽の素晴らしさを感じてほしいです。
(まとめ・長谷川恵子)
作曲家はこんな人/ショパン
ピアノの詩人と呼ばれているショパンは、多くの作曲家がオーケストラやオペラといった「公的」なジャンルの作曲をしましたが、作曲する楽器をピアノに限定したことで、ピアノの物理的な響きそのもの(ペダル、倍音、繊細なタッチ)を音楽の構造の一部に組み込みました。これは、音楽が「純粋な論理」から「音響の官能性」へとシフトし始めたことを意味します。
ショパンはポーランド出身ですが、のちにパリに亡命しました。19世紀のパリで力を持った市民階級(ブルジョアジー)は、自分たちの私的な空間で楽しむための「高雅な音楽」を求めました。そしてショパンの音楽は、見知らぬ大衆へ向けたメッセージではなく、限られた知的な仲間内で共有される「秘密の対話」のような性格を持っていたとされています。当時のパリの社会情勢、サロン文化、そして楽器の進化といった多角的な視点から分析する音楽学者もいます。
ショパンの音楽の特徴は、それまでの明快な調性から半音階的な進行を多用している点にあります。ピアノで数多くの名曲を残したリストの音楽は跳躍や厚い和音が多いのに比べると、ショパンの音楽の細かなアルペジオや装飾音は工夫の結晶であるとされています。
ショパンの音楽がこれほど多くの人に愛されるのは、彼が自らの『弱さ』や『欠点』を隠さず、それを最も美しい形で音楽で表現させたからだと言っても過言ではありません。
そして私たちがショパンを聴いて感じる「心地よさ」の正体は、実は作曲家としての徹底したプロ意識と、極限状態で絞り出された「魂の叫び」から生み出されたものなのかもしれませんね。
(県吹奏楽連盟監修)




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