ヴァイオリン/猶井悠樹さんなおい・ゆうき
1986年、ドイツ・ボン生まれ。桐朋女子高校音楽科、桐朋学園大学卒業。バイオリンを釋伸司、奥田章子、加藤知子、堀正文、ヘンリク・ホッホシルトらに、室内楽を徳永二男、毛利伯郎、原田禎夫、東京クヮルテットらに師事。国内のコンクールで多数入賞。若い人のためのサイトウ・キネン室内楽勉強会、小澤征爾音楽塾や、東京・春・音楽祭、サイトウ・キネン・オーケストラなどに参加。2012年からNHK交響楽団第1バイオリン奏者。
インタビュー
高校で目覚めた音楽愛
ホルン奏者の父がドイツの楽団にいたので、3歳ごろまでドイツで育ちました。帰国してバイオリンを始めたのは5歳。目立ちたがり屋だったのでキラキラした音が魅力的でした。ただ練習は一生懸命やっていたわけではなく、中学2年生で桐朋女子高校の音楽科を受けると決めてから、練習や勉強に向かうようになりました。
当時僕と母が西宮市(兵庫)に住んでいて、桐朋で教えていた父が単身赴任をしていました。いま思うと「自分が桐朋に行けば家族一緒に暮らせる」と思ったのが受験を決めた一番の理由だったかもしれません。
クラシック音楽に目覚めたのは高校です。授業でカラヤン指揮の「田園」を聴いたとき、すごく感動して涙が出そうになったんです。音楽は家の中でも流れていたけど、親に押しつけられている気がしていました。でも真剣に聴く友達に囲まれて、よく聴いてみると「こんなに素晴らしいことをやらせてもらっていたんだ」と。そのきっかけがなかったら仕事にしていなかったと思います。大学生のときに「小澤征爾音楽塾」に参加したことでオーケストラプレーヤーを目指すようになりました。初めて小澤さんに会ったとき、人を引き寄せるオーラや魅力がものすごかった。小澤さんから発せられる電気のようなものが頭からつま先までビリリ!と流れて、気がついたら涙を流しながら演奏したのを覚えています。
所属するNHK交響楽団には2012年、26歳で入団しました。19年にドイツに1年間留学させてもらいましたが、新型コロナウイルスの影響で後半は外出もできず、自分と楽器だけの日々を過ごしました。不安はありましたが、200曲ほどの練習曲をサイトからダウンロードして弾いてみたり、昔のバイオリニストについて調べたり。バイオリンの歴史にも詳しくなったし基礎に目を向ける大切な機会になりました。
N響のツアーで2、3回青森県には行ったことがありましたが、昨年出演した青い海と森の音楽祭のメンバーはすごく豪華でしたね。演奏は純度が高いというか、心が躍る、キラキラしていて楽しい本番でした。今年の音楽祭も参加予定です。地域の方々と狭いサロンのような場所で、近い距離で音楽を共有できる機会があったらすてきだなと思っています。
オーケストラの活動が一番の核となっていますが、今年2月に大阪と広島で開いたリサイタルはとてもいい経験でした。室内楽やソロも学びが多く、いろいろな角度から作曲家のことが見えて面白い。年々理想の音に近づいている気がするので、これからの自分に期待しています。
(まとめ・秋村有香)
作曲家はこんな人/チャイコフスキー
「涙の作曲家」と呼ばれるチャイコフスキー。その最大の理由は、音楽に込められた深い悲しみや感情の揺れが、聴く人の心を強く打つからだと言われています。ベートーヴェンのように動機を論理的に展開するのではなく、美しい旋律を繰り返したり(反復)、転調によって高揚させたりする手法そのものがチャイコフスキーの音楽の最大の特徴です。
また、チャイコフスキーは、自身の人生の孤独や苦悩、愛と喪失の感情を、そのまま音楽に刻みました。だからこそ、聴く人も「これは私のことだ」と感じてしまうのでしょう。感情を隠さず、むしろさらけ出す、それがチャイコフスキーの音楽の美しさであり、聴き手が涙する理由なのかもしれません。
チャイコフスキーの旋律はまるで魔法使いのように、音階を上下に動かすだけのシンプルな構造でも、心が浮き立ち、沈み、涙が溢れるほどの感情を呼び起こします。それは、旋律の美しさ、感情の深さ、オーケストレーションの巧みさ、さらにバレエとの融合といったいくつもの要素が絶妙に重なりあっているからで、これらのことが「分かりやすい美しさ」や「涙を誘う旋律」に結びついているのではないでしょうか。
チャイコフスキーの音楽の特徴のひとつは「一度聴いたら忘れられないメロディー」です。また、クラシック音楽は通常、動機を複雑に展開させますが、チャイコフスキーは「ここが一番聴かせたいところ!」という、現代でいう「サビ」を明確に作りました。『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』、ピアノ協奏曲第1番など、誰もが口ずさめるフレーズと、そのセンスがとても魅力的です。
(県吹奏楽連盟監修)




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