りんごの音符(21)

ヴァイオリン/直江智沙子さんなおえ・ちさこ

1984年、札幌市出身。神奈川フィルハーモニー管弦楽団第2バイオリン首席奏者。桐朋女子高─桐朋学園大卒。徳永二男氏に師事。宮崎国際音楽祭、セイジ・オザワ松本フェスティバルに毎年参加。財団法人ロームミュージックファンデーションの在外研究生として奨学金を得てベルリンに留学し、シュテファン・ピカール氏に師事。トリトン晴れた海のオーケストラ、ARKシンフォニエッタメンバー。

直江智沙子さん
直江智沙子さん
神奈川フィルの演奏会でバイオリンを弾く直江さん
神奈川フィルの演奏会でバイオリンを弾く直江さん(中央右)=2025年、横浜みなとみらいホール(©藤本史昭)

インタビュー

4歳でバイオリンを始めました。私の母が昔、札幌交響楽団と新日本フィルハーモニー交響楽団でバイオリンを弾いていた影響もあり、サンタさんにバイオリンをもらっていつの間にか弾くようになりました。当時の新日本フィルは小澤征爾時代真っただ中。どの音楽家よりも小澤さんに憧れていました。

バイオリン奏者だった母からは「嫌ならいつでもやめなさい」と言われ、なにくそ根性で続けてきた部分もあります。親がバイオリニストというと、スパルタで音楽教育熱心なイメージがあるかもしれませんが、母は大変さを知ってるからこそ「続けなくてもいいのよ」と。その反面「一日に5分でいいから毎日弾くように」とも言われました。音楽の楽しさを忘れることなく続けられたのは母のおかげです。

中学2年の夏、友人が桐朋学園の夏期講習に行くというので、母と一緒に半分遊び感覚で参加したことが入学のきっかけとなりました。初めは同級生や先輩のレベルの高さにおじけづきましたが、そこで恩師の徳永二男さんに出会いました。

徳永先生は長年NHK交響楽団のコンサートマスターを務めていた方で、技術のみならず、心で音楽をする大切さを教わりました。どのような音色を出したいのか、人の心を動かすような音楽ができるのか─それが本当の意味での音楽家だと教わりました。

バイオリンの魅力は全ての作曲家がバイオリンのための素晴らしい曲を残していること。弦の基本はバイオリンにあり、無限の可能性を秘めた楽器です。オーケストラでは花形でメロディーを担当することも多いです。私がいつも担当しているセカンドバイオリンはメロディーを支える役割。本格的に音楽を始めいずれ別の楽器を弾くことになったとしても、まずはバイオリンが弾けると音楽人生は楽しめると思います。

好きな作曲家は人間の心に寄り添うブラームス。晩秋に聴くブラームスは本当にグッときます。留学先のベルリンで、ブラームスのソナタ3番2楽章を聴きながらレッスンに向かう途中、あまりに街並みと曲がマッチし、泣けてきたこともありました。

青森は過去にプライベートでも訪れていて、出身地の北海道とは勝手に「きょうだい」のような感覚を持っていました。イントネーションや「んだんだ」などの方言が似ていて、昨年の音楽祭出演を経て、さらに好きになりました。

芸術総監督の沖澤のどかさん(青森市出身)、音楽主幹の隠岐彩夏さん(五所川原市出身)とは何度かご一緒しましたが、「青い海と森の音楽祭」は地元開催ということで二人ともすごくいい意味で力が抜けていました。東京では無意識に気を張ってしまう部分もあるので、そういう意味でも他では聴くことができない音楽になっているのではないでしょうか。

地方で音楽祭を続けるのは本当に大変ですが、音楽祭に参加する子どもがさらに増え、「楽器を始めました」などという声が聞けるようになれば良いですね。理想は音楽が身近になり、特別ではなくなること。そのためにもまずはやはりアウトリーチ(出前演奏会)でこちらから出向くことが大切だと思います。

音楽に言葉は不要で、言葉を交わさずとも心を通わせることができる。童謡やクラシックじゃなくてもいいんです。そういう意味で出演メンバーは一流の方ばかりなので、自信をもってお届けできると思います。

今年はリンゴ狩りをしてみたいです。時期的にはぴったりなのですが、やはり難しいでしょうか(笑)。

(まとめ・長谷川恵子)

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作曲家はこんな人/シューベルト

シューベルトは、19世紀初頭のオーストリアで活躍した作曲家で、「歌曲の王」と呼ばれています。歌曲(リート)の分野で卓越した才能を発揮し、31歳と短い生涯でしたが、600曲以上の歌曲を作曲し、その他にもピアノ曲や室内楽、交響曲なども作曲しました。彼の音楽は、美しい旋律と豊かな和声、そして詩的な表現力で知られていて、その豊かな情感を持つ音楽は、ロマン派音楽の先駆者となりました。

幼い頃から音楽の才能を示し、父親や兄から音楽の基礎を学びました。11歳でウィーン宮廷礼拝堂少年合唱団に入団し、声楽や作曲を学ぶ機会を得ました。実は、生前の評価は限定的で、経済的にもとても苦労しました。友人たちの支援を受けながら作曲活動を続け、晩年には交響曲や室内楽曲などの大規模な作品も手がけました。

ベートーベンは、音楽を「苦悩から歓喜へ」と論理的に、かつ強固な意志で構築する「物語」として完成させ、その音楽には「目的(ゴール)」に向かう力強い意志が感じられましたが、シューベルトの音楽からは、音楽はどこへ行くとも知れない「彷徨(さまよい)」が感じられます。歌曲集「冬の旅」では、その特徴が最もよく表現されていて、「音楽は外の世界を映すもの」から「人間の内面、それも言葉にできない無意識の領域をえぐるもの」へと進化させたと評する音楽学者もいます。

また、歌曲には詩を伴いますが、それまでは音楽の添え物だった「言葉」に対し、シューベルトは詩の裏側に隠された「絶望」や「狂気」を、ピアノの伴奏(例えば『魔王』の馬の蹄(ひづめ)の音、『糸を紡ぐグレートヒェン』の糸車の回転音)で可視化しました。

音楽には長調と短調があり、基本的に長調は明るい音楽が多いのですが、シューベルトの音楽には長調でありながら悲しさを感じる曲もあります。そんなシューベルトの名曲を探してみてはいかがでしょうか。

(県吹奏楽連盟監修)