りんごの音符(20)

ヴァイオリン/吉江美桜さんよしえ・みお

1996年、東京都出身。4歳からバイオリンを始める。桐朋学園大学ヴァイオリン科を首席で卒業後、同大学ソリストディプロマコースを最優秀の成績で修了。第12回東京音楽コンクール弦楽部門第3位、第84回日本音楽コンクール第3位、第6回宗次エンジェルヴァイオリンコンクール第2位、第69回プラハの春国際音楽コンクール特別賞受賞。2019年、2024年エリザベート王妃国際音楽コンクールセミファイナリスト。

吉江美桜さん
吉江美桜さん
吉江美桜さん演奏風景
エリザベート王妃国際音楽コンクールセミファイナルで演奏する吉江さん=2024年

インタビュー

昨年青森で開かれた「青い海と森の音楽祭」に出演するため、初めて青森に長く滞在しました。オーケストラの皆さんは「すごいメンバー」というのが一番の印象。尊敬する方々の中に入れてもらえることがすごく楽しみでした。青森に着いてみると、地域で音楽祭を盛り上げようという熱意と温かさを感じました。演奏する側としてもうれしかったです。

やはりオーケストラはすごくて、精鋭ばかり集まるとこういう音がするんだなと。メンバー一人一人が「お客様にいい音楽を届けたい」「自分はこういう音楽を愛している」という意思がはっきりしていて、誰も妥協していない。意思のある「強い音」を感じました。今年の音楽祭も出演する予定です。前回はオーケストラでの参加で実際に地域の方と関わることが少なかったので、今年は密接な関わりを持てるような活動に協力できたらうれしいです。

私が弾いているバイオリンは4歳の頃に始めました。母に連れられて行った子ども向けのオーケストラ演奏会でバイオリンが一番目立っていて、その時にバイオリンをやりたいって言ったのがきっかけです。

ずっとバイオリンを続けてきましたが、本番が楽しいと思えるようになったのは実は最近です。それまでは緊張もするし、失敗したらどうしようという気持ちが大きかった。でも、2024年に世界三大コンクールの一つ「エリザベート王妃国際音楽コンクール」に2度目の挑戦をしたことが大きな転機となりました。

今回が最後と覚悟を決め大きな緊張の中で本番を迎えましたが、会場のお客様が期待していたのは上手か下手かではなく「あなたはどんな音楽をするの」ということでした。そのとき「私がこの音楽に対する気持ちを伝えないともったいない!」と吹っ切れたんですね。結果は前回と同じセミファイナリストでしたが、伝えたいことを表現したいと思えたことで本番を楽しむことができました。

バイオリンを続けてこられたのは自分にはこれしかないという思いもありますが、何より恩師や周りの人たちが励まし続けてくれたから。自信を持たせてくれたおかげです。

最近はオーケストラで素晴らしい方々と演奏する機会が増えていて、これからも続けたいと思っています。自分で積極的に勉強する姿勢を忘れず、引っ張っていける存在になりたい。「音楽を楽しむ」という気持ちを持ち続けたいです。

(まとめ・秋村有香)

吉江美桜さん写真1 吉江美桜さん写真2

作曲家はこんな人/ベートーベン

音楽史において極めて重要な作曲家の一人であるベートーベンは、歴史上の偉大な音楽家を意味する「楽聖」と呼ばれています。ベートーベンの音楽は、それまでの音楽形式(ソナタ形式など)を「器」として例えるなら、その器に主観的な「熱情」を流し込みました。別の言い方をするならば、音楽を通して「個人の意志や苦悩を告白する場」へと音楽の目的が変わりました。

また、ベートーベンは貴族に対しても対等、あるいはそれ以上の態度を取りました。これは、フランス革命がもたらした「自由・平等・友愛」の精神を、ベートーベンが音楽家の立場から体現していたと言われています。それまでの音楽が宮廷のサロンという「閉ざされた空間」の娯楽だったのに対し、ベートーベンの楽曲は不特定多数の「公衆」へ向けた「音による演説」と見ることもできます。

モーツァルトの音楽が「完成された美の提示」であるのに対し、ベートーベンの音楽は「小さな動機」(例えば、運命の冒頭部のジャジャジャジャーン)が、全体へ展開していくようなスケールの壮大な楽曲を多く作曲しました。それまでのハイドンやモーツァルトの音楽は、貴族の食事や会話の邪魔をしない心地よい「BGM」としての側面がありました。しかし、ベートーベンは突然大きな音を入れたり、不協和音をたたきつけるなど、斬新的な楽曲を多く作曲しました。交響曲に合唱を取り入れたり(交響曲第9番)、交響曲で初めてトロンボーンを用いる(交響曲第5番)など、斬新なアイデアで音楽に革命を起こしました。

最後に、ベートーベンが晩年「耳が聞こえなくなった」という事実は、多くの方が知っていることと思います。音楽家として致命的な逆境を、音楽の力で克服したのです。だからこそ、ベートーベンの音楽を聴くと、現代の私たちも「明日からまた頑張ろう」という勇気をもらえるのかもしれませんね。

(県吹奏楽連盟監修)