りんごの音符(11)
ヴァイオリン/水野 琴音さん

小学5年生から中学校までの5年間を青森市で過ごしました。青森での思い出のほとんどは、青森ジュニアオーケストラでの出来事です。奈良県から引っ越しをしてきて新しい環境に早くとけこむためにも、アンサンブル経験のためにも、同年代の方々と共に音楽ができる場所があるといいのでは? と両親が探してくれて、見学後すぐに1歳半下の弟と入団することになりました。
青森市中央市民センターでの練習、夏の合宿、函館ジュニアオーケストラとの交流、高齢者施設での演奏、楽器体験会、クリスマス会─、沢山の思い出があります。団員の皆さんは温かくて、休憩時間も話をしたり。ほぼ毎週練習がありましたが、楽しみに通っていたのを覚えていますね。
バイオリンを始めたのは5歳の時です。すでにピアノとバレエを習っていたのですが、趣味でバイオリンを弾く父の楽器が家にあったため、弟と一緒に習い始めました。父方の祖父が声楽家で音楽の道に進んでいる親族もおり、クラシック音楽を学ぶということが比較的身近にあったように思います。
音楽家を志したのは、レッスンに加えて音楽セミナーやマスタークラスを受講するようになった小学校高学年の頃です。長期休みに県外に出向いて参加することもあり、参加されていた皆さんの素晴らしい演奏に触れ、憧れを抱いたことが音楽の道に進むきっかけになったと思います。
音楽家を目指す上で大切にしてきたことは、あまり人と比べないことでしょうか。難しいし私もしてしまうのですが…。ただ、都会よりも青森にいるほうが自分にフォーカスしやすいように思います。自分の信じること、好きなことをとことん追求することは大事にしてほしいです。
バイオリンは、音程も音色も自身で作り上げる繊細な楽器ですが、バイオリン自身が持つ様々な音色と、楽曲ごとに私自身が表現したいと考える音色の組み合わせが無限大で、丁寧に向き合うほどに新しい発見があることが魅力だと感じます。一緒に演奏する方々、お客様やホールの雰囲気、その場での自身の感情など、演奏時に受けるインスピレーションを敏感に感じ取って音にできる音楽家になりたいです。
今回の「青い海と森の音楽祭」には、芸術総監督の沖澤のどかさんにお誘いいただきました。国内外で活躍されている素晴らしい音楽家の皆様と青森で演奏させていただけることは、とても光栄で夢のようです。
7月5日の「0歳からのファミリーコンサート」ではソロを演奏させていただきます。沖澤さんの指揮で、さらに第一線で活躍されている方々のオーケストラで弾くのは喜びと同時に大きな緊張もありますが、幅広い年齢の皆様にお楽しみいただけると思います。ぜひ会場に聴きにいらしていただけると嬉しいです。

みずほフィナンシャルグループ成人の日コンサート2025でソロを弾く水野さん=1月、東京都のサントリーホール(写真・三浦興一)

みずの・ことね

2003年、青森市出身。浦町中(同市)を卒業後、東京藝術大学音楽学部付属音楽高校に進学、東京藝術大学音楽部器楽科に首席合格し、現在4年で宗次德二特待奨学生第9期生として在学中。日本音楽コンクール第1位、東京音楽コンクール第2位・聴衆賞、グリュミオー国際バイオリンコンクール第1位・グランプリなどを受賞