りんごの音符(10)
ビオラ/鈴木 康浩さん

ビオラ奏者として活動していますが、4歳のときにバイオリンを始めたのがきっかけでした。父の仕事の都合で生まれてすぐニューヨークへ。そこでクラシック好きな両親の勧めでバイオリンを習い、5歳前で帰国してからも続けていました。

音楽家を目指したのは中学2年で進路を考えたとき。当時バイオリンを習っていた辰巳明子先生から「自分で人生を考えて、覚悟を持つように。楽器を続けたいなら連絡をください」と言われ、しばらくレッスンを離れて考えました。当時は勉強や空手もしていたし、音楽家は厳しい道であることは辰巳先生から教わっていました。

ただ、楽器を弾かない人生を想像したら「弾きたい、続けてみたい」と思いました。当時きちんとした判断ができていたか分からないけど、自分で決断したから逃げ出せない、縛りができたのは良かった。その後、音楽を学べる桐朋女子高校音楽科(共学)、桐朋学園大学へと進みました。

ビオラに転向したのは大学卒業後です。ビオラは小学校の頃から弾く機会があって、僕が好きな室内楽ではビオラ奏者が少なかったから弾くことが多かったんです。そんな中で大学の途中から、ビオラの音色をつくっていく作業がすごく好きになって、最終的にビオラを弾くことを選びました。

ビオラの魅力は室内楽でよく分かると思います。中音域で、ほかの人の音色を後ろから柔らかく支えるのが得意。目立たないけど、バイオリンのメロディーの輝きを増す役割をする。バックアップするというのが僕の性格的にも合ってるんです。

室内楽は夏の「青い海と森の音楽祭」でもありますね。青森にはコロナ禍になる1年前、大鰐温泉に妻と行きました。時間をつくって妻と旅行するのが楽しみなんです。津軽三味線も体験したのですが、めちゃくちゃおもしろかったです! 弦を叩く、はじく感覚であんなに多彩な音色を作れるのには感動。あとはご飯もおいしかったですね。

音楽祭には、コンサートマスターの矢部達哉さんから誘ってもらって、もちろんです!と言って引き受けました。付き合いは長いけど共演はあまりなくて、直々に誘っていただいてうれしかったです。芸術総監督の沖澤のどかさんは、2月に読売日本交響楽団で一緒にカルメンを演奏して、彼女の素晴らしい音楽性に引っ張ってもらいました。

アウトリーチにも参加しますが、子どもたちにはクラシックを難しいものではなく直感的に聴いてほしい。僕たちよりも直感力に優れているから、そこに訴えかければその子たちの人生に何かしらの影響を与えられると信じています。ちなみに僕はクラシックを聴くとすぐ寝る子でした(笑)。聴きながら寝るのも贅沢な時間かもしれません。

音楽祭が長く続くことは「根付く応援」という意味で音楽家にもプラスになるんです。演奏会は僕たちの「発信」とお客さまの「受信」が常にあることで、どんどん感動の幅が広がっていく。岡崎(愛知)で10年以上続けている三重奏の演奏会があって、毎回本番の雰囲気も変わるんです。でも今回はオーケストラだから、また全然違うものになっていくと思います。本当に楽しみですね。
(まとめ・秋村有香)

王子ホールで(撮影・横田敦史)

「阪田知樹と読響メンバーによる室内楽」で演奏する鈴木さん。ピアノは阪田さん=3月24日、東京都のトッパンホール(撮影・藤本崇)

すずき・やすひろ

1976年新潟県生まれ、桐朋学園大学卒業。第12回宝塚ベガ音楽コンクール弦楽部門第1位ほか受賞多数。ベルリンのカラヤン・アカデミーで研さんを積んだ後、ベルリン・フィルの契約団員となる。ソリストとして国内外のオーケストラとコンチェルトを共演。アンサンブル天下統一、TOKI弦楽四重奏団、王子ホールのランチタイムコンサートなど、室内楽にも力をいれて活動。桐朋学園大学、洗足学園音楽大学で講師を務め後進の指導にあたっている。2006年より読売日本交響楽団ソロビオラ奏者

楽器を知ろう/ビオラ

ビオラは、弦楽器の一つで、バイオリンよりも少し大きくチェロより小さい楽器です。音域も、バイオリンとチェロの中間です。形はバイオリンと似ていますが、弓の長さや弦の張りが異なります。構え方はバイオリンと同じですが、少し深みのある音を出すことができるので、優しくて落ち着いた音色が魅力です。

ビオラは、古典音楽のオーケストラでよく使われていて、バイオリンやチェロと一緒に演奏され、まるで歌うように心に響きます。ビオラが演奏するメロディーは、時には優しく、時には力強く、音楽の中で大切な役割を果たします。また、ビオラはオーケストラだけでなく、室内楽での演奏にもよく使われます。

ビオラを弾くためには、バイオリンと同じように弓を使って弦を弾きますが、ビオラは少し大きいため、指を押さえる場所も少し広くなります。そのため、指の力や手のひらの柔軟性も大切です。練習を重ねることで、ビオラならではの深い音色を楽しむことができるようになります。

ビオラは、他の楽器に比べてあまり目立つことは少ないかもしれませんが、音楽の中で非常に大事な役割を持っている楽器です。ビオラの音色に耳を傾けてみると、その優しさや力強さに魅了されることでしょう。豊かな音色や深い響きを楽しみたい人は、ぜひビオラにチャレンジしてみてください。
(青森県吹奏楽連盟監修)