りんごの音符(9)
トランペット/山川 永太郎さん(青森市出身)

私が通っていた筒井南小学校にはとても盛んな吹奏楽部があり、3歳上の姉がテューバを担当していました。小学3年生で初めて定期演奏会を聴きに行った時、前に出てソロを吹いていたサックスの男の先輩がかっこよくて、その時は絶対にサックスをやるんだと意気込んで体験入部に行ったのを覚えています。
しかし体験入部では木管楽器はあまりうまく吹けず、サックスは人気もあって諦めるしかありませんでした。姉がテューバだったため金管楽器の吹き方は何となく理解していたので、トランペットは最初から音階が吹けました。それをたまたま顧問の先生に見つかって「君トランペットやったら絶対に上手になるよ」と言ってもらい、そこから私のトランペット人生はスタートしました。
もともと負けず嫌いな性格です。小学校では大会で成績が残せず、悔しさからたくさん練習しました。6年生で県大会に進むことができ「頑張れば結果が付いてくる」という成功体験ができたのは大きな出来事でした。そこからプロを意識するようになって中学、高校と楽器を続け、大学に進学して本格的に音楽の勉強を始めました。そこで師匠(内藤知裕氏)の「とんでもなくいい音」に衝撃を受け、オーケストラ奏者を目指すようになりました。
トランペットの魅力はなんと言ってもどんなジャンルでも主役になれるところだと思います。オーケストラでは繊細なピアニッシモからド派手なフォルテッシモまで使いこなし、あらゆる面で全体を引っ張っていける存在だと思います。一方で、音一つで全体の音も変わってしまうので責任はとても重大でプレッシャーも大きいですが、それが大きく高い壁であればあるほど、成功したときの充実感と得られる称賛は何にも代えがたいものです。
私が新日本フィルで試用期間中だった2022年11月、定期公演で沖澤のどかさん(青い海と森の音楽祭芸術総監督)と共演しました。楽屋で「僕も青森出身なんです」と伝えると、とても気さくに話してくれました。その後SNSでやり取りをする機会があり、24年の1月末に音楽祭出演の依頼をいただきました。
私も本県出身者でつくる「Aomori Trumpet Five」というアンサンブルを主宰していて、青森に音楽で恩返しをしたいと思い活動しています。沖澤さんの音楽祭への思いにとても共感し、参加させていただくことにしました。私が青森出身というのを覚えていてくれて、またご一緒できるのがすごくうれしかったですね。
高校卒業まで青森市で育ち、豊かな自然を感じながら楽しく音楽を続けてきました。音楽は人生を豊かにしてくれる素晴らしい文化ですが、真剣に向き合うことで自分を悩ませるものになる日もあるかと思います。ですが、音楽祭を通して音楽は素晴らしい、楽しいものなんだと強く感じてほしいです。皆さんの大切な思い出になることを願い、しっかりと演奏と心の準備を進めていきたいと思います。一緒に過ごせる時間を心から楽しみにしております。

新日本フィルの定期演奏会でソロ演奏する山川さん(中央)=2月、東京都のすみだトリフォニーホール(撮影・大窪道治氏)

やまかわ・えいたろう

1995年、青森市出身。9歳よりトランペットを始める。青森商業高校、尚美学園大学音楽表現学科卒業。桐朋オーケストラ・アカデミー研修課程修了。第38回青森県新人演奏会に出演。第24回コンセール・マロニエ21 金管部門第3位。ソリストとして、仙台フィル・新日本フィルと共演。トランペットを内藤知裕、長谷川潤、ヒロ・ノグチ、亀島克敏の各氏に師事。2022年より新日本フィル首席トランペット奏者

楽器を知ろう/トランペット

トランペットは、金管楽器の一つで明るく力強い音色が特徴です。オーケストラや吹奏楽、ジャズ、ポップスなど、幅広いジャンルで活躍し、華やかなメロディーを奏でる楽器として親しまれています。
トランペットの歴史は古く、なんと4000年以上前から使われており、その起源は動物の角や貝がらという説があります。1800年代に入ると、今のトランペットのようにピストンバルブ(三つのボタン)がつけられ、トランペットに求められる全ての音程を容易に出すことができるようになりました。
楽器の形は他の金管楽器のように長い管がまかれた形状をしています。音を出すためにはマウスピースに唇を当てて息を吹き込み、唇の振動によって音が鳴るんですよ! ピストンバルブによっていろいろな音が出せるようになってからは、たくさんの音楽でトランペットが使われるようになりました。
音の強弱(ダイナミクス)がつけやすく、柔らかい音から鋭い音まで自在にコントロールでき、さらにミュート(弱音器)を使うことで音色を変えられるのも魅力です。トランペットは、楽しい曲やかっこいいソロ演奏ができますし、特に、ジャズやポップスではアドリブ演奏で個性を発揮することもできます!
初心者でも音が出しやすく、演奏していて楽しい楽器で、音が鳴った瞬間の爽快感(は格別です! あなたもトランペットを吹いてみませんか?
(青森県吹奏楽連盟監修)