りんごの音符(6)
オーボエ/戸田 智子さん

オーボエとの出会いは中学校の吹奏楽部の体験入部です。オーボエを吹く先輩の音色と容姿の美しさに惹かれ、第一希望で選びました。部活で新しい楽器を用意していただいたり、良い先生や仲間にも恵まれて、音楽やオーボエへの興味はどんどん高まっていきました。飽きっぽい性格の私ですが、長く続けられている唯一のものかもしれません。
オーボエははっきりと耳に届く音色なので、良くも悪くもBGMのように聴き流せないのが特徴だと思います。音域が広くない分、表現に特化して発展してきました。古くからある楽器なので、バッハのオリジナルの作品を演奏できることも大きな魅力だと感じています。
私が音楽家になろうと思ったきっかけははっきりしませんが、弘前大学教育学部を卒業するころ、専攻の音楽より副専攻の特別支援教育に興味があり、特別支援学校の教員か、オーボエ奏者のどちらかと思っていました。
東京藝術大学大学院の入試に落ちたところで臨時講師の話をいただき、弘前市の特別支援学校で1年弱働きました。仕事は楽しく、自分に合っていると感じる一方、子どもたちの卒業後の就労・生活の難しさを知り、教師にこだわらずとも様々な支援の形が必要とされていると思い、迷いなくオーボエの道を選ぶことができました。その後東京藝術大学(別科)、同大大学院に進学し、修了後にオーケストラに入団、現在に至ります。
私が育った岩手はシャイで控えめな方々が多いのに対し、大学生活を送った青森は積極的で人懐っこく、情に熱い方が多い印象です。気持ちをはっきり伝え合うがあまり喧嘩になってしまったり、バイト先で高校生とベテランの方などが友達口調で話していたり…最初は距離感の近さに驚くこともありました。
しかし、一度その中に入ってしまってからは遠慮のない関係が心地よくなりました。上京して15年経った今でもリンゴを送ってくださったり、節目に連絡を取らせていただいたりとご縁が続いている方が多く、青森は私の心を掴んで離しません。
今年1月、3泊4日の旅行で青森を訪れました。弘前大学の先輩や、「青森第九の会演奏会」で毎年お世話になっていた青森市民交響楽団の方々との再会もあり、当時に戻ったような気持ちになりました。後ろ髪を引かれる思いで青森を後にし、東京行きの新幹線でしんみりしていた、まさにその時「青い海と森の音楽祭」の出演依頼がありました。パートナーは憧れのオーボエ奏者・西沢澄博さん(弘前市出身)。飛び上がるほどうれしかったことを覚えています。
芸術総監督の沖澤のどかさん(青森市出身)、音楽主幹の隠岐彩夏さん(五所川原市出身)とも共演させていただいたことがあり、高い音楽性を持つお二人のもと、きっと良い音楽祭を作ることができると確信しました。そして、音楽祭の成功には地元の皆さまのご関心とご参加が不可欠だと思っています。奏者と地元の方との距離が近い、地域に愛される音楽祭の第一歩となることを願い、微力ながらその一員になれたらうれしいです。

©Takuma Kuzutani

東京ダブルリード本舗の公演で演奏する戸田さん(右)=2024年8月、東京・銀座の王子ホール

とだ・ともこ

1987年、岩手県花巻市出身。弘前大学教育学部卒業、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。ドイツのライプツィヒ音楽演劇大学にて学ぶ。現在、藝大フィルハーモニア管弦楽団オーボエ奏者、東京藝術大学音楽学部管弦楽研究部演奏講師

音楽はおもしろい

「オーケストラ」と一言でいうとさまざまな形態がありますが、今回はクラシック音楽におけるオーケストラについて取り上げます。
基本的には管弦打楽器で構成される演奏団体で、一般的に目にするのは約50~70人規模ではないでしょうか。小さい編成では、10~20人程度の室内楽オーケストラもあります。
標準的な配置だと、客席から見てステージ前列左に第1バイオリン、そこから右に第2バイオリン、ビオラ、チェロ(またはチェロ、ビオラの順)、右後方にコントラバスが並び、弦楽器の後ろにはオーボエやフルートなどの木管楽器、その後ろにはトランペットやトロンボーンなどの金管楽器と打楽器が位置します。曲によってはピアノ、ハープ、チェレスタが使用されます。また、曲そのものや作曲された時代によって使われる楽器に違いがある場合もあり、それにより規模や編成が変わることもあります。
オーケストラの呼び名には「交響楽団」「管弦楽団」「シンフォニーオーケストラ」「フィルハーモニーオーケストラ」などがあり、それぞれに語源がありますが、現在では特に分け隔てなく使われています。
オーケストラにはさまざまな魅力がありますが、その一つとして多くの楽器で繰り広げられる多彩な音楽表現が挙げられます。弦楽器、管楽器、打楽器がそれぞれにフレーズを奏でて一つの音楽が生まれたときの感動は、何ものにも代えがたいものです。繊細で美しく優しいp(ピアノ)の音色や、豊かで力強く迫力のあるf(フォルテ)の響きなどを生の演奏で聴くと、オーケストラや音楽の魅力をより強く感じられるのではないでしょうか。
(青森県吹奏楽連盟監修)