りんごの音符(5)
ピアノ/横山幸雄さん

僕にとってピアノを弾くのは、食事をしたり会話したり寝るのと一緒。食事は毎日とるでしょ? それと同じ感覚です。
ピアノを弾いてない自分の記憶はありません。気付いたときには弾いてました。周りが言うには、始めたのは5歳。母がピアノの先生で、習いに来る友達の姿を見て自分もやるのかなって思ったみたい。時間があればレコード。寝て起きたら聴く、みたいな。無意識だけど、頭の中には常にクラシック音楽が流れていて、それは今も変わりません。
これまで将来の職業を考えたことはないけど、ピアニスト以外に道はなかったように思います。周りの誰よりも弾けていたし、ピアノだったら自分のやりたい音楽を表現できる。僕にとっては何でもできる楽器なんです。
よく弾く作曲家はショパンとベートーヴェン。2010年にはショパンの生誕200年を記念して、ショパンが作曲した全曲を1日で弾きました。20年はベートーヴェンの生誕250周年で、2日間でベートーヴェンのソナタ全曲を演奏する企画もやりました。
作曲家が生きていた時代を知ることで、その人生と作品が密接につながっていることがわかってきます。知識が増えると、音楽に対して感じるものや見え方が変わってくる。それを伝えたくて企画しました。どちらも演奏内容を変えながら毎年続けています。
何時間も演奏し続けるのは、簡単だとは言わないけど大変だとも思わなかった。いい音楽を届けられるように準備をするのが一番大変なんです。準備っていうのは練習するってこと。音楽家として一番エネルギーを使う場面。だから、2時間のリサイタルでもそれ以上の演奏会でも特に変わらないと思います。
僕のスケジュールは毎日バラバラ。特別なルーティンもありません。寒い日は指を動かしてストレッチするくらいかな。ただ、ピアノを置いている部屋は365日24時間、温度24度・湿度45%に保ちます。それがピアノにとって良い環境だから。自分のピアノもよく触ります。誰が弾くかで音が変わるからね。大きなリサイタルにも自分のピアノを持って行きます。
青森の思い出は、20歳の頃にやったデビューツアー。全国各所を巡っていて、青森で演奏しているときに発熱してしまって。病院にお世話になりました。それで気分が落ち着いてツアー続行。あのときの病院がまだあるか分からないけど、何を言いたいかと言うと、青森の人には優しくしてもらったということです。
音楽家は1回きりの演奏会が多いですが、来夏から始まる「青い海と森の音楽祭」には中心メンバーとして関わっているし、青森という同じ場所で毎年お客さまに会えるのがうれしい。地域の人との交流が楽しみなんです。僕にとって音楽は会話ですから。互いに知ることで深まるものがあるはず。
青森の子どもたちには気軽に聴きに来てほしい。眠くなっても大丈夫。僕もよく寝ていたし。ピアノを通して、音楽のすばらしさを伝えます。

3月に神奈川県で開かれたリサイタルでピアノを弾く横山さん。ピアノの中には何本も弦が張られており、豊かな音色を作り出す

よこやま・ゆきお

「青い海と森の音楽祭」特別顧問。1971年、東京都生まれ。第12回ショパン国際ピアノコンクールで日本人として歴代最年少入賞。2010年、ショパン生誕200年を記念した14時間に及ぶ演奏会でギネス世界記録に認定、翌年記録を更新。日本パデレフスキ協会会長

楽器を知ろう/ピアノ

ピアノは、鍵盤を押すことで音が出る、とても美しい音色を持つ楽器で、数ある楽器の中でも特に有名な楽器の一つです。白と黒の鍵盤がほぼ交互にならんでいて、それぞれの鍵盤を押すと、異なる高さの音が鳴ります。たくさんの鍵盤があるため、いろいろなメロディーや和音を演奏することができます。
ピアノには大きく分けて「グランドピアノ」と「アップライトピアノ」の二つの種類があります。グランドピアノは、音の響きが豊かで、大きなホールやコンサート会場でよく使われる、横に長い形のピアノです。アップライトピアノは、グランドピアノよりも小さく、家庭などでも楽しめる縦型のピアノです。また、デジタル技術の発展により電子ピアノも広く使われるようになっています。
1人で旋律も伴奏も演奏することができたり、1台のピアノを2人で演奏する連弾ができるなど、いろいろな演奏方法があります。指先を使ってさまざまな表現ができ、「手のひらで感じる音楽の強弱やニュアンス」は、ピアノを使って音楽を表現する際の重要な手段の一つです。
演奏を重ねるごとに、少しずつ上達を感じられるので、楽しみながら長く続けていくことができる楽器です。ぜひ、ピアノの音色を楽しんでみてくださいね。
(青森県吹奏楽連盟監修)