りんごの音符(2)
オーボエ/西沢澄博さん(弘前市出身)

音楽は、どちらかというと苦手でした。保育園でのお昼寝の時間が嫌いでエレクトーンを習い始めるも、楽譜が読めずその後辞めました。でも、中学生になり友人に誘われて吹奏楽部に入部。担当の楽器を決める日に学校を休んだらオーボエになっていました。これが、私とオーボエの出会いです。

父はアマチュアのオーボエ奏者。それを知っていた顧問の先生は「家で教えてもらえるでしょう」と思ったそうです。私は「オーボエってなに?」という状況。父がたくさんのCDやレコードを聴かせてくれて、その魅力に気付き、どんどんのめり込んでいきました。さらに、楽器を演奏する楽しさや大人数で奏でる面白さを知り、音楽が好きになりました。

オーボエは、ほかの楽器と比べて奏者による音色の違いが出やすいと感じています。吹き口の「リード」と呼ばれる部分は植物のアシを削って作られていて、プロの奏者の多くが自作します。削り具合によって吹きやすさや音色が全く違うので、私は3、4日おきに新しく作りますね。より自分らしく、より自由になれる音色を作り出せる楽器。そこが魅力です。

ほかの音楽家と比べると、仕事以外ではあまり音楽を聴かない方かもしれません。ですが、自分の子どもたちが聴いている音楽で気になる曲があると、そのアーティストの作品を聴くことが多いです。最近では、お仕事でご一緒した歌手の玉置浩二さんの歌声にハートをつかまれて、しばらく聞きまくっていました。

演奏する時には、その曲の作曲家を好きになるように心がけています。多くの作曲家が「長い冬や苦悩を経て春が来た喜び」のようなものを曲にしていますが、四季の変化がはっきりしている弘前で生まれ育った私は、共感できる部分があるように思います。本県で多くの時間を過ごせたことは私の誇りです。

来夏、素晴らしい音楽家の皆さんと地元で共に演奏できることに、今から興奮しています。特にかつてオーボエの生徒さんでもあった、今や世界的指揮者の沖澤のどかさんと青森で共演できるのは本当に嬉しいです。

音楽はこれが正解というものがありません。なので聴き方も「こう聴かなくてはいけない」ということはありません。「じっと」聴くもよし、「ウトウトまどろみながら」音を全身で感じて聞くのも良し。自由に楽しんでよいのです。仲良くなれれば一生の友でいられるのが音楽ですから。

仙台フィルハーモニー管弦楽団の弘前公演でオーボエを演奏する西沢さん(左)=2024年6月、弘前市民会館(同楽団提供)

にしざわ・きよひろ

「青い海と森の音楽祭」顧問。1979年、弘前市生まれ。
仙台フィルハーモニー管弦楽団首席奏者。豊田小、第五中、東奥義塾高、東京音楽大卒。宮城学院女子大音楽科非常勤講師

楽器を知ろう/オーボエ

管楽器は、唇を発音体とする金管楽器と、唇以外(リードや空気の振動)を発音体とする木管楽器に分類でき、オーボエは木管楽器のひとつです。
リードと呼ばれる細長い薄板を2枚重ねたものが発音体で、ダブルリードと呼ばれます。リードを上下の唇で挟み、2枚のリードの隙間に息を入れることで音が鳴ります。ストローをつぶして隙間に息を入れて鳴らすのと原理は同じです。
楽器の歴史は古く、古代エジプトの壁画にもオーボエの元となる楽器が描かれています。
通常編成のオーケストラでは多くの場合2~3人、大編成の吹奏楽では2人程度の奏者がいて、主旋律を担当することが多いです。高音域を受け持ち、時に優しく、時には物悲しい甘美な音色を奏で、他の楽器とともに旋律を演奏することも多いですが、ソロ楽器として活用されることが多いのも特徴のひとつ。チャイコフスキー作曲「白鳥の湖」の第10曲「情景」の旋律はとても有名です。
音をコントロールするのが難しい楽器ですが、それだけに美しい旋律を演奏できたときの喜びはひとしおです。オーボエ奏者は同じオーボエ属であるオーボエダーモレやコールアングレ(イングリッシュホルン)を演奏することもあります。いずれもオーボエよりやや長く、音域が低く、構造が少し違うことでオーボエよりもふくよかな音色の楽器です。
オーケストラを支えるさまざまな楽器。その特徴や魅力を、青森県吹奏楽連盟の監修で紹介します。